キラメキを食べたい

ミーハーの戯言

自担が去ってしまった人生で

 自担・マリウス葉がアイドルを辞めた。去年の年末に卒業発表を受けてから時間が経つにつれて気持ちの整理は着きつつあって、マリウス担としての最期に自分の思いを書き残さなければとも思っていたのだが、何をどこからどのように書くべきかに悩みあぐねて半年も経ってしまった。だって、マリウスについて語るということは私の人生について語るということだから。振り返ればガッツを持ち合わせていない弱小ファンでしかなかったものの、マリウス担の自我が芽生えた中学2年生の春から高校、大学を経て社会人となった今まで、マリウスの影響を多大に受けながら生きてきたのである。人生と言ってしまっても過言ではないだろう。何から何まで書こうとすると取り留めがなくなってしまうため、今回は、活動休止前後から卒業そして引退にかけて私が抱いていた感情を書き表そうと思う。

 

 マリウスがアイドルを辞めてしまうのではないか、という危惧は、正直に言えば活動休止が発表された瞬間から抱いていた。当時活休明けだった聡ちゃんの発表時と比較し、本人コメントの有無や明確な理由の公表非公表、事務所のコメントの雰囲気から、毛色の違いが気になっていた。そして活休を知らされた直後に第一に思ったのは、「イヤな予感が当たってしまった」である。というのも、2020年2月発売のアルバム『POP×STEP!?』に収録されたマリウスのソロ曲「all this time」を初めて耳にした際、何とも言いがたい不安を感じたのを覚えている。曲調も歌詞も、受け止められなかった。いちファンの戯言でしかないが、本人の持つ悩みが昇華されてないように思ってしまったのである。

 マリウスの活動休止中に私に起きたイベントは就職活動と卒業論文執筆だった。もともと「マリウスと同じ土俵(読み:ステージ。魂の–という意味もある)に立ちたい」という夢見がちなファンだったため、お花畑思考でエンタメ業界を志望していたが、私の力不足および「もしマリウスがこの世界に帰ってこなかったら…?」という恐れもあり希望が叶うことはなかった。エンタメ業界以外のエントリーシートでも「尊敬する人物は?」という問いに本気(マジ)で「マリウス葉」と書いてもいたのだが、書くたびに「私からマリウスを取ってしまったら何が残るのだろうか」という疑念が渦巻く。そして卒論においてもうっかり「男性アイドル」をテーマにしてしまい、否が応でもマリウスのことを考えながら書く羽目に合ってしまった。というわけで、ぐるぐるぐるぐるぐるぐるぐるぐると自分とマリウスと今後の人生について考えていたのだが、私が自分の人生について向き合っていた頃、ファンによる特定でマリウスがスペインの大学に通っているという情報を得て、彼も彼で人生を進められているのだと妙な安心感を覚えたのである。

 そして、2022年12月。この頃のSexy Zoneの4人はドーム公演に向けてか光り輝いていたので眺めていて面白く、音楽番組や雑誌も久しぶりに追っていたのだが(日にちが卒論締切間近だったため「外れてくれ!」と願いながら東京ドーム公演を申し込んだところしっかり外れました)今思えば覚悟が決まった生き物特有の美しさを放っていたのかもしれない。私も無事に就活も卒論も終え、京セラ公演の舞台セットにマリウスのサインがあったとのことで「何か動きがある」と察した直後に卒業発表があった。アルバイト先の休憩室でコメントを目にした時、「この日が来てしまったか…」と落ち込んだものの、それ以上に本人のコメントを読めたことが嬉しかった。このまま二度と彼に触れられぬことも考えられる範疇にあったからである。しかも、動画まで付いてきた。そこからは怒涛のインスタグラム展開が始まり、あっという間に大晦日を迎えた。みんなに見てもらえるようにとカウコンが活動再開後の最初で最後のステージとなり、しっかりサヨナラショーまで設けてもらえて、さみしさと晴れやかさを胸に卒業を迎えることができた。ビジュアルに関しては、正直、動画を一目見た時に「ああ、"一般人"になりかけている…(聡ちゃんが戻ってきた際には概念の宝塚歌劇団星組トップスターかと勘違いしてしまうほどビジュアルに磨きがかけられていて惚れ惚れとしたため尚更)」と感じていたのだが、5人旅の合間合間のインスタライブで徐々に"殿上人"に戻っていき、カウコンでは自身の美しさを出し切っているかと思えるほど、それこそラストデイのトップスターと化していて、自担が持っていた「見られる者」の特性を垣間見れたように感じている。最期にアイドルとしての姿を生で拝めなかったのは本当に悔しく、口座預金やら人脈やら、私にパワーさえあればカウコンのチケットを入手できたのに…!!という思いに今でも苛まれているが、この悔しさは一生忘れられずに抱えていくものなのだと割り切れてはいる。ただ、私はカウコンにも入れず『ザ・ハイライト』ドーム公演でオレンジのペンライトを光らすことも果たせていないのだが、それでもマリウス担を名乗っても良いのだろうか?(誰に聞いている?)思えば2019年の6月、宝塚歌劇団月組二番手スター・美弥るりかの退団公演に通っていたころ、「次に贔屓の退団などあれば、今度はもっと上手く立ち回ってみせる…!!」と自分自身に誓っていたのだが、その今度が全く予想していなかったパターンで来てしまい為す術なく終わり、より自分に対して失望を覚えてしまったのであった(完)

 

 さて、前述の通り私は卒論で「男性アイドル」をテーマにし、いくつかの先行研究に目を通したのだが、その中でマリウスに思いを馳せる瞬間が多々あった。それを踏まえてマリウスの卒業コメントを読み、「答え合わせ」のように感じた部分もあったので、少しばかり文章化を試みたい。

期待に応えたいと精進するうちに、自分が本当はどんな人間なのか、何が好きなのか、何が必要なのか等わからなくなり、自分を見失ってしまいました。

ここの部分。資料が手元にないためニュアンスになってしまうのだが、『アイドル・スタディーズ 研究のための視点、問い、方法』*1の、記憶が正しければ「コラム3 アイドルに投影されるもの[香月孝史]」にて、「いくらアイドルが正しくあろうとして、その正しさにファンが影響を受けたとしても、その正しさはアイドルが周囲から求められて生じたものではないか(超要約)」とあって、初読時に思わず「今まで大変申し訳ありませんでした…」と口にしてしまった。マリウス×「正しさ」だけに注目しても、デビュー当時から片鱗はあったものの、大学入学前後から「フェミニスト」または「アクティビスト」として見られるようになって、雑誌を中心にそういった仕事も入り始めて、期待に応えようとして自粛期間には海外大学のオンライン講義も受け、それが積もりに積もって体調不良に繋がったと考えられるので、「周囲の期待」というもののギルティさを感じ取ってしまう。しかも、「私たちをエンパワメントしてくださるマリウス葉さん…!」という扱いを受けていたのと同時期に、バラエティ番組では「おバカタレント」っぽい演出がなされていたりもして、そりゃ、何者か分からなくもなるか、、、という納得感を覚えた。

今の夢としては将来、(中略)世界中の困った人たちや国際社会の役に立てる人間に成長していきたいと思っています。

とも述べているが、そもそもマリウスのアイドル業には「タカラジェンヌになりたい」という自己実現の面と「世界中の人を幸せにしたい」という目的を果たすための手段としての面があって、後者を成し遂げるためにアイドル業以外の選択を取った、という見方も可能である。マリウスは2019年の時点で「自身の影響力をもって学んだことを周囲に伝えていきたい(ニュアンス)」とも語っていて、私はそのマリウスから伝えられて感化された人間の一人であるのだが、マリウスの持つ影響力はアイドル業を辞めても尚「元Sexy Zone」として保っていく意思がありそうなので(自身の誕生日にインスタライブで寄付を呼びかけるなど)これからもマリウスによるエンパワメントは続いていくと思える。

 自己実現の面や「エンターテイナーとしてのマリウス」に惹かれていた身としては、そこに抱いていた夢や欲求*2を諦めなければならないという事実が未だに受け入れられないのだが、それ以上にマリウス葉そのものを愛していると自負していたいので、この事実は飲み込もうと努めている。それでもやはり、ケンティーにおける菅田将暉や聡ちゃんにおける松松や大橋和也といった気の許せる同世代の同業者がマリウスにもいれば何か違ったのではないか(『コドモ警察』メンバーとは親交が続いていたようですが、今では同世代で扱えても当時は「お兄ちゃん」ポジションだったらしいので…)とか、マリウスをジャニーズ事務所に導いた稲垣吾郎がメンターの立場になってくれてたら…(とばっちり)とか、たらればを繰り返してしまう。何かしらの間違いでいいから芸能界に帰ってきてくれないかな…(名脇役

 

 で、マリウスの卒業および就職によって強制的に俺の人生も第二章に入ってしまったのだが、どうやって生きていくべきか悩んでいる。ちなみに、卒業発表前から「マリウスがいないならエンタメ界なんてクソ食らえさ!」という思いがあり、諸々のエンタメから物理的に距離を置こうとも考え、色々な歯車が噛み合った結果聡ちゃんのしずおか元気旅大使就任に触発されて静岡にIターン就職を決めたマリウス担と化してしまった。リープリンとして謎の達成感が生じており、順番は前後するものの最後の最後にマリウス葉に絡めて人生を棒に振れたこと、今は誇りに思えている。一度は趣味に人生を賭けて何かを成し遂げてみたかったから。しかし、棒に振ったのは確定事項なので、そのツケがいつ回ってくるのかという恐怖は覚えている。とりあえず、マリウスのInstagramを眺め、近隣で開催されるSexy Zone含むアイドルのコンサートや舞台公演には足を運んで、どうしても魅力に抗えない興行は東京、名古屋、大阪、宝塚、福岡などへの遠征を試みる余生を過ごしつつ、静岡の地でマリウスに胸を張れる大人になりたいと思っている。

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↑聡ちゃんの地元・島田市のばらの丘公園でちょっこりさんを掲げて一枚。テーマはフェアウェルパーティー

 

*1:アイドル・スタディーズ - 株式会社 明石書店

*2:同担の大半が抱いてなさそうな夢や欲求の例:

・大学卒業後から俳優業にも力を入れて、ゆくゆくは『キンキーブーツ』のローラ、『エリザベート』のトート閣下、『スカーレット・ピンパーネル』のパーシー、『はいからさんが通る』の少尉を演じてほしい

・『ル・ポールのドラァグ・レース』で審査員を務めてほしい

・メットガラのレッドカーペットを歩いてほしい

など。尚、RPDR審査員とメットガラに関しては、アメリカ下院議員AOCことアレクサンドリア・オカシオ=コルテスがクリアされているため、マリウスがAOC並にご活躍されればワンチャンあるのではないかと期待しています。